山桜
4月、屋久島の山の合間に山桜の花が緑のモザイクの中を薄いピンク色に染めます。
その様はある種独特で本州においてもこれほど見事な山桜の斜面はなかなかお目にかかれません。
本州の自然林と比べ他の樹種よりも明らかに山桜が多く自生しているのはそこがかつて屋久杉林であったことを示しています。
伐採された屋久杉林から第一パイオニアとしてまず発芽した中に山桜が多く含まれていて40年近くたった今立派な山桜に成長し春の山並みを美しく彩らせています。
さらに年を重ねると山桜も寿命を迎え、森の遷移は続き違う種が優勢になります。これはつまり今私たちが見ることができる限られた現象なわけです。
そこで思い返されるのは山尾三省の「アニミズムという希望」の中にある、風景というのは出来事だという一節です。
~~風景を自分の外側に存在する景色として眺めているときには、単なる風景に過ぎないけれど、自分の内面が写し出された鏡像ととらえるとそれは「出来事」になります。ここに風景の秘密というか真実があります。
山に咲く桜を風景ととらえるよりもさらに深く掘り下げて出来事として捉えるとそれは風景よりもさらに深く私の心の中に染み入ります。