皆既日食が終わった。
食糧危機やオイルショックがまことしやかにささやかれ、予測がつかなかった皆既日食が無事なんの混乱も起きず終了した。
当日は動くことをやめ友人らと家の近くのお茶畑で空を眺めた。
強烈な西風に運ばれていく低層雲の上にどっしりと居座る高層雲に阻まれ太陽の姿は残念ながら拝むことはできなかったが空が異様な暗さになり日食を感じることはできた。
太陽が月に隠れた時、夜の虫たちが鳴き始め、隣の家の犬がけたたましく吠えていた。
そしてあっけないほどに無情にも時は流れついに太陽は雲の隙間から顔を覗かせることなく再びもとの光を取り戻していった。